「神話」とは何か

翻(ひるがえ)って、「神話」とは何か。

それを考えるときに、アメリカの比較神話学者であるジョーゼフ・キャンベルが語った、「神話」についての一節は示唆に富む。

『トウカイテイオー伝説 日本競馬の常識を覆した不屈の帝王』(著:小川隆行・ウマフリ/星海社)

「神話は、なにがあなたを幸福にするかは語ってくれません。しかし、あなたが自分の幸福を追求したときにどんなことが起こるか、どんな障害にぶつかるか、は語ります」

いまこの瞬間を生きる我々に、「どう生きるべきか」を諭してくれるのが、「神話」だとするならば、93年の有馬記念は、キャンベルが語った意味での「神話」そのものと言える。

キャンベルはまた、世界各国の民族が持つ「神話」の中に、ある一つの決まった形があることを明らかにした。

「旅立ち→通過儀礼→帰還」というその類型は、「英雄の旅」と呼ばれ、ジョージ・ルーカスが映画『スター・ウォーズ』の脚本の参考にしたことで知られる。