帝王の帰還、もしくは英雄の旅
トウカイテイオーの足跡は、日本競馬に授けられた「神話」の一つであり、またそれはキャンベルが示した「英雄の旅」そのものでもあった。
トウカイテイオーは、日本競馬史上において初の無敗三冠馬となった「皇帝」シンボリルドルフの血を引き、父と同じように無敗で皐月賞、日本ダービーを駆け抜けた。
その牝系を見れば、古くは下総御料牧場の牝系に連なり、史上初めて牝馬で日本ダービーを制したヒサトモの血が流れている。
3歳(旧馬齢表記、以下同・現2歳)12月のデビュー当初から、その走りは洗練されていた。父と同じくサラブレッドの本質的な気高さと成熟した精神性を持ち、その容姿の美しさは、パドックを周回するだけで観る者を魅了した。
柔らかで軽やかで、それでいて力強く伸びるフットワークは、サラブレッドの理想型のようにも見えた。
それは、「皇帝」と称された父と、その牝系から受け継いだ、高貴な血の結晶であったと言える。トウカイテイオーは、生まれながらにして「英雄」であり、その「旅立ち」は誰もが羨む輝かしいものだった。