自分のことを可哀そうだと思ったことはない
話は替わりますが、私は若い頃から、とても貧乏でした。
よく人にこの話をするのですが、たった1枚のきものを冬は袷(あわせ)に、夏は裏をはがして着ていました。人が電車に乗るところを私はそのお金がなくて、朝起きて一生懸命歩いたこともあります。
ただ顔だけはいつもきれいに化粧して、毎日の生活に夢中でした。誰でもこの私のことを可哀そうにと思ったことでしょうに、私自身は一度も自分のことを可哀そうだと思ったことはないのです。
そんなことはちっとも気にならない、自分自身の生きている願望みたいなものは別のところにあると、はっきりとは分らないが、そう確信していたように思うのです。どんな所にでも人間の仕合せと言うものはあると思っているのです。
幸福であるのも不幸であるのも、本人の考え方一つで決まると思うのですが如何でしょうか。私はどんな所からでも、私流に幸福を見つける自信があるのです。