一人の命より、家の存続

中世・近世の武士にとって、何より大切なのは「家」です。家の存続が一番。

源平の戦いの際、平維盛(光源氏の再来と謳われた平家の公達)は、東国の武将・斎藤実盛に「関東の武者というのはどういう者か」と尋ねました。

すると実盛は「いくさはまた、親も討たれよ、子も討たれよ、死ぬれば乗り越え乗り越え戦ふ候ふ(戦いに臨めば、親が討たれても子が討たれても構わず、死ぬものがいれば、その屍を乗り越え乗り越え戦います)」と答え、平家の人々を震え上がらせた、とされます。

なぜ、そんな命知らずの戦いが可能だったのか? それは戦場で命を捨てれば、主人が「家」に対して褒美、則ち土地をくれたから。

土地は不動産、つまり永遠の財産です。たとえ自分が死んでも、土地を得て「家」は栄える。そうイメージできたので、武士は命を的に果敢に戦えた。人、一人の命より、家の存続。それが武士の共通の観念だった。