〈カラオケdondon〉の奥まった一室。そこは通称〈バイト・クラブ〉のための部室。ここの部員になるための資格は、【高校生の身の上で「暮らし」のためにバイトをしていること】。渡邉みちかは高校二年生。彼女もまた、アルバイトで生計を立てなければいけない事情を抱えていた。

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渡邉(わたなべ)みちか 県立赤星高校二年生
ファミリーレストラン〈ロイヤルディッシュ〉アルバイト店員

 すごい、四人もいるの初めてだね。この間、初めて坂城(さかしろ)くんと紺野(こんの)くんと三人でここにいたけど、もう四人になったんだ。
 三四郎(さんしろう)くんって、いい名前だね。あの柔道の? 知ってる。何かで読んだか見たかしたことある。
 三四郎くんって呼んじゃいそう。いい? 私の方が先輩だもんね。
 毎週何曜日とか、決める? 集まるのを。

「それはどうかな。いや、俺はほぼ毎日いるからいいけど、なんか義務みたいになっちゃうのは違うし」
「集まるって約束じゃなくて、この日なら来られるかも、をカレンダーに書いておけばいいんじゃないのか。でかいカレンダーあるだろ」
「それでいい。だってこの先もまた増えるなら会いたいもの。女子ひとりだから女の子欲しいけど」
「あ、一人、呼んでいいならいるんだけど」
「友達か?」
「幼馴染み。今は家は離れたけど前はすぐ隣りに住んでたんだ。たまたまだけど、生活のためにバイトを始めた」
「いいんじゃないか? 筧(かけい)さんに言ってみろよ」
「どこの子?」
「榛(はしばみ)学園」
「わ、お嬢様じゃないの? え、そういえば三四郎くんは」

 蘭学?
 三四郎くん、蘭貫(らんかん)学院なの?
 すごい。頭良いんだ。え、でもあそこバイト禁止だよね友達いるけど。ごまかしてるの? 
 担任の先生って。
 え、どういうこと。
 すっごい厳しくて、本当にアルバイトがバレただけで停学だって話は聞いてるんだけど。