私の学費は、母が出すことになっています。将来大学に行くことになっても不自由しないように。
 生活費も、私が食べていける分だけはお小遣いのように毎月母が送ってくれることになりました。それは、私が就職して一人で暮らしていけるようになるまでは、という約束で。父が自分で使ったりしないように、私だけの口座に。
 その間に、父は新しい仕事を見つけて、自分のお金は自分の生活のために使えます。だから、私も不自由はしていません。
 家が、広い家から狭いアパートに移っただけ。
 それでも、ちゃんと一人の部屋はあります。
 アルバイトをしようと決めたのは、自分のお小遣いは自分で、と思ったから。そんなことしなくても大丈夫だって父は言ったけれども、それでもやっぱり。
 父と暮らすことを決めたのは私なんだし。自分のことは自分でしようって。学校も、アルバイト禁止ではなかったから。
 バイト先は、〈花の店 マーガレット〉。
 偶然だったんですけれど、父が大学卒業してすぐに働いていた会社の、同僚だった人のお店だったんです。
 女性で、実家がそこだったそうです。就職はしたけれども、ご両親の具合が悪くなってしまって、会社を辞めてお店を継いだんだとか。
 私が父の娘だと面接のときにわかって、お互いにびっくりしました。父も後から店に来て、旧交を温めていました。知り合いのところなら安心だって、父もバイトすることを承知してくれました。
 父は、知り合いの会社に就職し直しました。
 やっぱり営業職でした。それでも、母の会社のように部長待遇とかではなく、普通の平社員として。平でもないのかな。一応主任とかそういうものかも。
 誰か、他の女の人と付き合っているような気はします。母も、誰かパートナーがいるようです。