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 ほとんど、生まれてからずっと。
 自分たちが覚えていない赤ちゃんの頃からずっと隣りの家にいて、毎日一度は顔を合わせていた三四郎と、隣り同士ではなくなってしまって。
 菅田(すがた)さんの会社が倒産して、家も売却してそこからいなくなるっていうのを聞いたのは、二人とも高校に入学してすぐ。
 幼稚園も小学校も中学校も一緒で、高校は別になっちゃったけどそれは仕方なくて、でも変わんなく家は隣同士なんだからって思っていたのに、あっという間に三四郎たちは引っ越してしまって。
 そして私も、引っ越して。
 こんなことって本当に起こるんだって、三四郎と話しました。
 まったくの偶然なんだけれども、隣り同士の家でそれぞれに会社の倒産とか両親の離婚とかが起こってしまって、引っ越しがあるなんてって。
 親同士も、引っ越す前に会って挨拶とかしたんですけれど、本当にお互いにどういう顔をしていいもんだか、と、言い合って、最後には皆で大笑いしてしまったって言ってました。本当に、ですよね。
 そんなことが起こるもんなんですねって。
 お互いに、それぞれが新しい生活になっていくんだってことで、頑張りましょうって。これからも、何かのときには連絡し合ってやっていきましょうって。
 うちの父は、三四郎とお父さんとは仲良かったみたいだから、いいなって思いました。いろいろと話し合える相手がいるって、とても大事なことだと思うから。
 三四郎と離れてしまうのは、ちょっとショックだったけれど、でも別にいなくなるわけじゃないんだし。
 引っ越しする前に、ちゃんとお互いに次の住所も教えあったし、電話番号は変わるからってそれも。
 たぶん今は無理だけど、もしも携帯電話を買えるようになったらまたいつでも連絡取れるからって話した。
 私は、たぶんすぐにでも携帯電話を買えたりできると思うんだけど、三四郎は全然ムリだろうって。
 バイトも始めるけれど、三四郎の場合は本当に切実みたいで。
 携帯があれば、二人ですぐに何でも話したりできるかもって。だから、当面の目標は二人で頑張ってアルバイトのお金を少しでも貯めて、自分の携帯電話を持てるようにしようって話していた。