久しぶりにわたしの人生が戻ってきた

過去数年間、わたしはなぜかこういう旅行中のトラブルに巻き込まれなかった。しかし、その前を思い返せば、何をやっても、どこに行ってもトラブル続出で、何一つスムーズにいかないのがわたしの人生だったはずである。久しぶりにわたしの人生がわたしの手に戻ってきた。考えようによっては、これは言祝ぐべきことではないのか。

なんてことを考えて明るい気分になるわけもなく、心身ともにどんより疲れ切って羽田空港に戻った。航空会社のスタッフと、飛行機の振り替え便予約やホテル予約をしようとする乗客たちが空港の預け荷物受け取り場に散らばっていた。どうしてこの人たちはフォーク並びをしないでぐちゃぐちゃに散在しているのか。これが英国だったら、フォーク並びをしない人に激怒し出すスキンヘッドのおっさんとかが必ずいて、君たちは泣くほど罵倒されるぞと思いつつ、どこに並べばいいのかわからずぼんやりしていると、いつの間にかわたしが最後まで残っている乗客になっていた。

「手頃なホテルはもう残ってないんです……。当社で補償できる金額よりかなり高いですが、もうここしかありません。差額は負担していただくことになります」

まあ、こんなものだろう……。

そう思いながら空港近くに一泊して(でもホテルに着いた時点で午前1時だった)、翌朝、無事に福岡に飛んだのだった。