巷では、ニューヨーク・ヤンキースが最有力候補ではないかと噂されたがーー(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
今シーズンにメジャー6年目を迎え、MVPと日本人メジャーリーガー初のサイ・ヤング賞のダブル受賞が期待されている大谷翔平選手。エンゼルス残留か、それとも…。その去就に世界の注目が集まってきたなか、現地の一流ジャーナリストであるジェイ・パリスさんが追った大谷選手のメジャーデビューの軌跡を振り返ります。パリスさんいわく「大谷に興味を示さないチームなど、あるはずがなかった」そうで――。

メジャーデビューに向けて

大谷翔平がついに日本を飛び出し、驚異的な二刀流のスキルとともにメジャーリーグにやってくる。

「僕はまだ選手として完成していないですし、成長できる環境でやっていきたいです。高校を卒業するときにも、同じように思っていました。メジャーに行きたい一番の理由はそれですね」

そんな大谷に興味を示さないチームなど、あるはずがなかった。

25歳を待たずにメジャー行きを決めた大谷は、若手の外国人選手に対する契約金の制限ルールが適用され、受け取れる額は限られてしまう。とはいえ、それはメジャーリーグの全30球団が大谷の獲得に乗り出せることを意味し、資金力のあるビッグ・クラブ以外にもチャンスがあるということになる。

各球団の上層部が、どれだけ大谷の二刀流を歓迎しているかは未知数だった。日本プロ野球界では受け入れられ、国際試合でも大谷は実力を示したのだが、はたしてメジャーでそれが通用するのか。

「大谷は、それぞれのスキルが際立っている」あるナショナル・リーグのGMは語った。「打てば150m以上の飛距離、投げれば160km超え、走れば1塁までは4秒を切る。これだけのスキルを兼ね備えた選手はめったにいない」

それでも、謙虚な大谷はメジャーで二刀流をやらせてもらえると確信してはいなかった。何しろ、1世紀前にベーブ・ルースが活躍して以来、誰も成し遂げていないことだからだ。

「やらせてもらえるかどうかわからないですけど、その点について球団の考えは聞きたいですし、どういった状況なら可能なのか知りたいです」大谷はAP通信社にそう語った。

「そのあたりがはっきりしないことには、僕からはなんとも言えません」

日本プロ野球界で過ごした5年間は成功そのものだった。一度は入団を断ったものの、その後日本ハムと契約してプロ入りしたあと、大谷は2016年にチームを日本一に導いた。

日本での5年間で、大谷は投手として42勝15敗、防御率2.52、543イニングで624奪三振という記録を残した。打者としては、48本塁打に166打点、打率は.286。

「プロ入り前は、二刀流をやれるなんて想像していませんでした。でも、ファンの応援やコーチたち、栗山英樹監督の指導で実現することができたんです。だからこそ、これを続けていきたいという強い思いが生まれました。自分のためだけでなく、支えてくれる皆さんのためにも」