大谷の獲得合戦
大谷の獲得合戦が始まり、各球団は力強い打撃力と剛速球を持つ日本人スター選手を振り向かせるため、全力を尽くすこととなった。
巷では、ニューヨーク・ヤンキースが最有力候補ではないかと噂された。大谷に高校卒業後のメジャー行きを踏みとどまらせた日本ハムと、似たような環境があると球団は自負していたからだ。
日本ハムでは、大谷の尊敬するダルビッシュ有と同じ道を歩むことが可能だった。もしヤンキースに入団すれば、2度のオールスター・ゲーム選出、2009年のワールドシリーズでMVPに輝いた松井秀喜の軌跡をたどることが可能だ。
現在もヤンキースのアドバイザーを務める松井は、チームに貢献したい気持ちを明らかにした。「もし彼(大谷)が来てくれるということなら、僕も交渉には関わりたいですし、ヤンキースへ入団してくれるよう説得するつもりです」松井はmlb.com にそう語った。
日本の野球界に精通するアメリカ人と同様に、松井も同胞の大谷に秘められた無限の可能性を見抜き、弱冠23歳であることにも注目していた。
「これまでの彼を見ると、投手としても打者としても素晴らしいのは間違いないですね」松井は言った。「日本で活躍しましたから、僕も一人の野球ファンとして、彼がメジャーでどんなプレーを見せてくれるか楽しみです」
おおむね前向きなコメントではあったが、二刀流の選手として成功するかどうかは明言しなかった。大谷の日本での成績を評価しつつも、メジャーリーガーとして10年キャリアを積んだ経験から、慎重になったのだろう。四つのチームでプレーした10年間を振り返って、大谷の試みが成功するかどうか、松井には確信が持てなかったのだ。
「僕の知る限り、一人の選手が投手と打者の両方で優れているという例は見たことがないですね。正直、今後どうなるのかわかりませんが、応援しています。彼が二刀流を望んでいて、チームも容認しているなら、やるしかないでしょう」
しかし、同胞の先輩の力も及ばなかった。大谷が候補を7球団に絞った際、ヤンキースは選ばれなかったのだ。