ラッキー7に選ばれた球団

ラッキー7に選ばれたのは、ロサンゼルス・ドジャース、ロサンゼルス・エンゼルス、シアトル・マリナーズ、テキサス・レンジャーズ、サンディエゴ・パドレス、サンフランシスコ・ジャイアンツ、シカゴ・カブス。この中から、大谷は早急に決断を下すと約束した。

その間、どの球団もただ手をこまねいているわけではなかった。大谷にユニフォームを着てもらうため、それぞれが個性豊かなアプローチを仕掛けていった。

ドジャースは、言わずと知れた野茂英雄を擁していたチームだ。エンゼルスにはメジャーリーグでトップクラスの打者マイク・トラウトが在籍しているし、オレンジ郡には大規模なアジア人コミュニティがある。

マリナーズもやはり、イチローを始め複数の日本人選手が活躍してきたチームだ。レンジャーズは、大谷が少年時代に憧れていたダルビッシュ有がデビューを飾ったチームだ。パドレスは野茂英雄が現在アドバイザーに就任しており、かつて日本ハムがアリゾナ州ピオリアの施設で春季キャンプを行ったという縁がある。

ジャイアンツもまた、ベイエリアに広がるアジア人コミュニティが近いという利点を持ち、さらに大谷本人に引けを取らない個性的な人物がいる。日本語を話し、将来の監督候補と目されるベンチコーチのヘンスリー・ミューレンスだ。大谷との会話がスムーズにできるだけでなく、ミューレンスは日本で3年間プレーし、1995年にヤクルトスワローズで日本シリーズを制したという実績がある。カブスは日本人選手が活躍した実績があり、FA後のダルビッシュと契約している。

最終候補の中でも国際契約プール金を大谷に注ぎ込む意欲を見せていたのは、レンジャーズ(354万ドル)、マリナーズ(356万ドル)、エンゼルス(232万ドル)の3球団だった。

日本ハムに2000万ドルの譲渡金を支払うことを差し引いても、大谷の存在は史上最大のバーゲンセールに他ならなかった。日本でオールスターに5度も選出されたスター選手を最盛期に迎え入れることができ、しかも投打の双方に優れているとなれば、2億ドル級の契約になるはずだとも言われた。

どの球団も、石にかじりついてでも大谷を獲得するべく奮闘した。「プレゼン資料の作成は突貫工事だったよ」ある球団幹部は語った。「大谷をどのように起用するか、どうやって育てるか、トレーニングのスケジュールはどんなものか、彼の要望にどう応えていくか。それらをすべて、超特急でまとめなければならなかった」