松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第29回では本能寺で織田信長(岡田准一さん)を討った明智光秀(酒向芳さん)が、家康捕獲を厳命。伊賀越えで絶体絶命の危機に瀕しながら、家康は三河に向かうが――といった話が展開しました。
一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第47回は「伊賀越えで家康を助けた人たちのその後」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!
伊賀越えを助けたのは誰か
今回の原稿は、ドラマの内容を直接フォローするようなものではなく、やや「勉強回」的なものとなりました。大河ドラマ本篇後の「紀行潤礼」のようなニュアンスでお楽しみいただければ幸いです。
さて、徳川家康の生涯でもっとも危なかった、といわれるのが、今回描かれた「神君伊賀越え」です。
武田信玄からコテンパンにやられたあの三方ヶ原の戦い以上に、命の危機であった、といわれるこの事件ですが、その実態は、よく分からないことが多い。とくに「家康を助けたのがどんな人たちだったのか」という点が明らかではないのです。
このあと徳川の世が長く続くのですから、「ご先祖さまが神君・家康公を救ったのだ!」と力説する資料がたくさん残っていても不思議ではないのですが…。
そこでぼくなりに調べ、整理できたことを記したいと思います。