幸せな関係は終わってしまった
記念旅行から1年後。家に買い置きしてあった缶酎ハイを最後の1本まで飲み干した彼は、その夜のうちに亡くなった。
「そんなに慌(あわ)てなくていいじゃない?」と、同居する時に2人で言ったきり、結局、入籍をしないまま、幸せな関係は終わってしまった。出逢いから6年後、由紀さん36歳、彼が46歳の時だった。
「彼のことを思い出すと、どうしても涙が……」
由紀さんは声を震(ふる)わせながら、泣き笑いの顔を私に向けた。
「もっと長く一緒にいたかったのに。ただそれだけだったのに……。なんかもう、そのあと何をする気にもなれなくて……」
由紀さんが、がっくりとうなだれた時、私は彼女の茶髪に白髪が交じっているのを見つけてしまった。