作家の黒井千次さんと評論家の樋口恵子さんは、同じ小学校の同窓生。近年はそれぞれ「老いの日常」を綴ったエッセイが話題だ。久々の対面で、幼少期の思い出から老いへの対処まで会話が弾んで(構成=篠藤ゆり 撮影=村山玄子)
小学6年で集団疎開、その目で見てきたこと
樋口 私たちは同じ小学校(東京市北豊島郡高田町高田第五尋常小学校。現・目白小学校)の出身で、同学年。誕生月も同じ5月でしたね。
黒井 樋口さんは何日ですか?
樋口 4日です。
黒井 僕は28日だから、おっ、年上の女(ひと)だ。記事が出る頃はお互い91歳ですね。
樋口 黒井さんは『読売新聞』に、老いの実感を綴ったエッセイ「日をめくる音」を連載なさっていて。いつも楽しく拝読させていただいております。
黒井 いやいや、それはこちらの言うことです。それにしても、お会いするのは何年ぶりだろう。
樋口 私どもの「高齢社会をよくする女性の会」の大会にお招きしたのが1984年でしたから、あれからほぼ40年。あの時は「女性がつくる老後の文化」がテーマで、佐藤愛子さんや俵萠子さんなど、ゲストが豪華でした。男性にも参加していただきたいと思い、作家としてご活躍中の黒井さんに声をかけ、ご快諾いただけた。