ノーメイクの私に、周囲からの反応と、いいことが

その後は日中、面会の約束をしている仕事先にも、眉毛とリップだけで出かける。安室ちゃんブームのおかげで、すっかり姿形を消してしまった眉毛だけは、放置することができない。これがないと、本当に貧相な顔になってしまうからだ。

そんな自分に引け目を感じているせいだろう。私は会話の最初に「いや~、今日はすっぴんでして」と、天気のように自分の顔の話を始めていた。そんなことを言われても相手も困るだろうに、居酒屋の店主と同じく

「え~、そうなんですか?」

と、メイク前後はそんなに変わらないと、褒め言葉をかけてくれる。そのうちノーメイク宣言もすることはなく、いつも通りにしれっと登場する。

「……小林さん、今日は化粧されていないんですか?」

そんなふうに勘繰ってくる人は、ひとりもいなかった。そりゃそうだ。相手は私に完璧な仕事を求めてきているだけであって、化粧をしようがしまいが関係はない。興味もない。見られてもいない。体温並みの気温が続く最中、私のメイクはどんどん薄まっていく。ああ、なんて楽なんだ。仮にこのすっぴん状態のまま、酒場で恋に落ちたら、ずっとメイクをしなくてもいいというのも、憧れる。

そもそも私の生活だとそんなにメイクは必要がない。1ヵ月のうち、半分から3分の1程度は自宅でパソコンに向かう日々、それ以外は外出をする。そんな生活スタイルで、メイクをしないで過ごすようになると、次第に肌もきれいになってきた。広がっていた毛穴は目立たなくなり、日焼け止めを塗るだけで、頬にツヤ玉ができるようになった。だらしないのではなく、あくまでも疲れ顔回避として始めたことだけど、何かとメリットは高い。素肌美を手に入れるのは、メイクアイテムを買う以上に費用がかかるのだ。