日常に飽きている自分だから書ける小説を

途方もない景色を見たいという欲求は、年齢を重ねるほど強くなっています。そろそろ50歳を迎えますが、何かにつけてつまらないと思うようになりました。読書にしても、若い頃はもっとのめり込むように読んでいたし、本の世界が鮮やかに感じられたものです。

でも、読書経験を重ねるにつれ、「ああ、これはあの小説の影響を受けているな」と味気ない読み方になり、心が震えることも減ってしまって。昔のように友達と遊ぶこともないし、病気をしたのもあって、まぁ面白いことがない(笑)。

かつては、本気を出せば大抵のことはやってのけられると信じていましたが、今はそんな気持ちにもなれません。人生経験を重ねるうちにいろいろな可能性が切り捨てられていき、今いる場所にすがりつくように生きている。

だからこそ、僕はもう小説を書くしかありません。そこにしがみつくほかないし、日常に飽きている自分だから書ける小説があると信じています。

本を出すことは、いわば博打。ほとんどが売れませんが、もしかしたら……という望みに賭けて出版するわけですよね。プライベートではギャンブルなんてしない僕が、仕事では大博打をしている。そういう意味では、人生の面白みを感じます。

こんな性分ですから、先のことを考える余裕はありません。いただいた仕事をどうにかこなして、作家としての命をつなぐだけ。きっとこれからも、模索しながら書き続けていくのだと思います。