16畳の応接間がチョコレートで.......

順調なスタートを切ったはずの与一さんは、なぜか19歳で「東京で修業をしたい」と言い出す。

――おじいちゃんが驚いて、お前の好きな物何でも買うから残れ、って。船でも飛行機でも、なんてね(笑)。それでも東京へ行って、義理の大叔父(祖父・又一郎の妹の夫)、長谷川一夫の家に厄介になりながら、1年は東京の舞台に出たりしてました。

2年目に、長谷川がNHKの大河ドラマ『赤穂浪士』の大石内蔵助役で顔寄せに行くので、付き人としてついて行って、端っこに座ってました。そしたら原作の大佛(次郎)先生や脚本の村上(元三)先生やチーフプロデューサーとかが、「あの子誰?」って。「出る物あるよ」って言われて、すぐ扮装テストです。

翌日、長谷川に「お前、出るようになったから」と。それが堀田隼人で、小説ではこの堀田が主人公なんですよ。この浪人者と、盗賊・蜘蛛の陣十郎(宇野重吉)と、吉良側の密偵・お仙(淡島千景)の三人の眼を通して赤穂浪士の討ち入りが語られるわけなんです。

放送が始まるともうすごい反響で、小説では途中で堀田とお仙は心中するんですが、殺さないでくれっていう投書が山ほど来て、それで最後まで出ることに。