列車にトイレが設置されているのは、いまやあたりまえとなりましたが、鉄道が開通したころから車両にトイレ設備があったというわけではありません。糞尿がレールに飛び散っていた「垂れ流しトイレ」の時代を経て、いまの形になりました。そのような列車トイレについて調べ、筆を執るのは、NPO法人21世紀水倶楽部の顧問を務める清水洽さん。清水さんいわく「中国では鉄道も軍用設備のため、注意しないと写真撮影も取り締まりの対象」だそうで――。
中国の鉄道事情
NHKのテレビ番組「関口知宏の中国鉄道大紀行」で有名になりました中国の国有鉄道ですが、トイレの話題は一度もなかったと思います。それほど話題にするに値しなかったのでしょうか?
中国では鉄道も軍用設備のため、注意しないと写真撮影も取り締まりの対象です。私が最初に中国に行った1982年の北京、上海のトイレにはドアがなく、あっても下半分は開いていて、トイレの中が丸見えでした。
ホテルの外の公衆便所では、板の上に皆並んで屈んで用を足していました。その後2002年と2008年に訪問しましたが、上海は高層ビルの街に変わり、空港からは6車線以上ある高速道路ができていました。
住民の意見を無視する一国一党の独裁政権にしかできない都市計画だと思いますが、今も都市と地方の格差は大きいようです。
中国の鉄道の歴史は古く、1876年にイギリスの商人により営業され、1894年の日清戦争後、ロシア、日本、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなどの列国が鉄道建設の利権を競ったのが始まりでした。
日本でも1905年の日露戦争の勝利後、南満州鉄道株式会社を設立し、時速130キロメートルで大連~長春間(701.4キロメートル)を8時間半で結んだアジア号は歴史に残る偉業です。
中華民国から新中国(中華人民共和国)に変わると、鉄道は国の交通体系の中心と位置付けられるようになり、2014年の時点で営業キロ11万2000キロメートルまで建設が進んでいます。