告知していると喪のしごとは断然楽に

プロのライティングは強いので、メイクは濃いめに。顔も年々ぼやけてくるので、肉眼で見ると濃すぎるぐらいでちょうどいい。瞼も下がって目が小さくなっているはずだから、アイラインをきっちり引いてあげると目が大きく見える。

髪の毛はアホ毛が出ないよう、ヘアオイルでふんわりまとめてあげよう。これにプロのレタッチ(修正)がほどよく入ると、素晴らしい仕上がりになるだろう。

避けたほうがいいのは、美顔アプリで撮影したスマホの写真。元気に生きているときは楽しくていいが、漫画みたいな顔の故人を見て、参列者も葬儀で笑いをこらえることになってしまう。

親友のお母様も膵臓がんで亡くなったが、告知していたので、本人の希望で私の夫が遺影を撮影した。告知していると、葬儀の希望や、財産分与のことなど、亡くなる前にいろいろ聞けるので、喪のしごとは断然楽になる。治療方針だって本人の自覚のもと、決められる。

親友のお母様は、治療を拒否した。最初の手術のあと、

「あんな、まな板の上の鯉みたいな思い、二度としたくないわよ」

と言って。五十代での死は早かったが、これも本人の意思なのだ。

※本稿は、『親を見送る喪のしごと』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


親を見送る喪のしごと』(著:横森理香/CCCメディアハウス)

親を見送る世代の「大人女子」は、自分自身も気力体力が衰えはじめ、病気になる人も。親の死はただでさえ参ってしまうものなのに、そこへ畳みかけるようにくる様々な手続きはあまりにも膨大で、期限付きのものも多く、めくるめく試練のようなもの。いよいよに備える時期から、葬儀、相続含む様々な手続き、法事、遺品整理、実家の整理、墓問題まで著者の体験のほか、経験者、専門家にもお話をうかがい、大人女子が体験してきた「喪のしごと」についてまとめました。各所には「豆知識」も入れ、実務的な面もサポート。読み物としても、実用的な面としても、知っておいてほしい1冊です。