バブルの副作用

1989年、GNP(国民総生産)は約3兆ドル(420兆円)に達し、1人あたりの国民資産額はアメリカの4倍にのぼりました。数字の上では日本は史上空前の豊かな国になったのです。高級ブランドや高級車が飛ぶように売れ、海外旅行ブームが訪れました。海外で高級ブランドを買い漁る日本人の様子は、パンデミック前の訪日旅行者さながらでした。

国もバブル景気に乗っかりました。竹下登内閣は「ふるさと創生事業」と称して、全国の地方自治体に一律1億円を配りました。バブルで税収が増えたからこそできた究極のバラマキ政策です。地方自治体の創意工夫で町おこしに役立ててもらおうという趣旨でしたが、本当にふるさと創生になったのかどうか。

中には1億円で奨学金制度を作った真っ当な自治体もありましたが、話題になったのは、1億円で金塊を購入して展示したり、日本一長いすべり台を作ったり、純金のカツオ像を作ったりといった自治体でした。日本中が浮かれていたのですね。

一方でバブルの副作用も目立つようになりました。

土地の転売を目的として強引に買収を行なう「地上げ」が横行し、暴力団が関わることもありました。都市部の住宅地が開発業者に買い占められ、古くからのコミュニティは崩壊しました。都市部で土地を売った人たちが郊外に住宅を買って移り住んだため、郊外でも地価が上昇しました。

地価が上がりすぎたことにより、マイホームを持つことが難しくなりました。東京圏のマンション分譲価格は会社員の平均年収の8.9倍に達しました。あまりの土地の高騰に、次第に庶民の不満が高まっていきます。

※本稿は、『池上彰の日本現代史集中講義』(祥伝社)の一部を再編集したものです。


池上彰の日本現代史集中講義』(著:池上彰/祥伝社)

日本に民主主義はあるのか? 戦後史から何を学ぶのか?
政治、経済、外交、安全保障、エネルギー……
学校では教えてくれない現代史を池上さんと一気に振り返る集中講義。

安倍政権の振り返り、戦後の日米関係、旧統一教会と自民党の関わり、政治とメディアの関係など、戦後、現代の日本をつくってきた様々な事象を池上さんが徹底解説。