全国には「洗濯場踏切」や「パーマ踏切」も

北は北海道夕張市が石炭で賑わっていた頃の名残をとどめる「ファッション通り踏切」から、南は鹿児島県指宿(いぶすき)市の謎の「虚無僧(こむそう)踏切」まで、現地の人の話を聞けば必ず何らかのヒントが得られ、意外な発見につながった。

愛知県豊川市の「洗濯場踏切」では、教えられた通りに崖下へ通じる道をたどってみれば湧水を利用した本物の洗濯場の「遺構」があったし、熊本県八代市の「茶碗焼踏切」の近くでは、熊本藩の細川家の御用茶碗を長く焼いてきた由緒ある窯に突き当たる。

岡山市の「国境踏切」のすぐ近くには備前国と備中国の境界と小さな両国橋もあり、ついでながら境目(さかいめ)というバス停も見つけることができた。

長野県の飯山線「パーマ踏切」では、ずいぶん昔に移転した美容室に関わった二人の女性の戦後史をたどることができるなど、踏切の名前がいろいろな「地元の物語」の入口になっていたのである。

上より JR 飯田線「洗濯場踏切」、肥薩おれんじ鉄道「茶碗焼踏切」、JR 吉備線「国境踏切」(撮影◎筆者)