1つ目の「個」、つまり選手たちについて言えば、彼らが失敗を恐れず積極的に世界へ飛び込んできたのが大きい。
象徴的なのは東京五輪から主将を務めるエースの石川祐希(ゆうき)だ。大学1年で日本代表に初選出され、アジア大会、世界選手権など多くの国際大会に出場。大学在学中から単身イタリアへ渡り、18年からはプロ選手として5シーズン、世界最高峰のリーグで勝負してきた。
圧倒的な高さやパワーを誇る世界の猛者たちを相手に、どんな攻撃ならば勝負できるのか。石川はイタリアで己の技を磨いてきた。《日本バレー史上最強の選手》という呼び声に違わず、バレーセンスは抜群で、技の種類も豊富で精度も高い。
なおかつ世界で戦い抜く強靭な肉体をつくるために、日々のトレーニングはもちろん、食事管理も徹底している。イタリアでは栄養士の指導に従っての自炊が基本。食事のメインディッシュは低脂肪、高たんぱくの鶏肉や豚肉のソテーで、朝と晩は必ず白米を摂り、茶碗に入れて量を計るのがルーティーン。夕食時にはニンジンやブロッコリーなど数種類の野菜が入ったスープを飲む。
トレーニング、食事、休息に怠らずに取り組んだ結果、筋肉量が増した。一回り大きくなった身体からしなやかに放つスパイクで、次々得点をもぎ取っていく。「ここで1点が欲しい」という場面で確実に決め切る勝負強さは石川の武器であり、口にする目標も、エースとして実に逞しいものだ。
「確実に日本のレベルは上がっています。だからこそ、大事な試合を勝ち切る強さをチームとしてつけられるようになれば、もっと成長できる。まずは自分が、勝利を決める1点を獲れる選手になりたいです」(石川選手)