人に話せなかった父の変わり者エピソード

人に話せなかった父の変わり者エピソードを少し話すことにする。書けないレベルのヤバイ話が多すぎて、書けるのはごく一部だけれど。実家に帰省することはほとんどないが、帰ったときに、父の奇行に遭遇する。父は突然、私の荷物や母の荷物をなりふり構わず片っ端から捨て始める。何も言わず、無言で。

がさーっと音を立てて服や母方の祖母の形見、写真の入ったアルバムなんかを手あたり次第ゴミ袋に詰め、ゴミステーションを何往復もし、一時間後にはもぬけの殻。ただならぬ気配に、母も私も何も言うことができない。まるで何かに取りつかれているようだ。それに口を出したらまたキレ散らかすに決まっている。触らぬ神にたたりなし。そう言えば、中川家のお父さんも、お母さんが口を出すとすぐにお母さんをボッコボコにしたらしい。

今、何が起きているのか理解ができない。人の大事なものを何の前触れもなく、何の断りもなくいきなり捨て出す人がどこにいるだろう。って、実家にいるんですけどね。しかも物を捨てる前後、怒っている様子もなく、母と私に普段通り話しかけてくるのだ。本当に感情が分からなくてゾッとする。夜、父が寝てからゴミステーションに行くと、生ごみなどの匂いにまみれた、見たことのあるものの入ったゴミ袋が見つかった。掘り起こして、家に持ち帰り、中身を出す。

本当に何もかも捨てられている。私の赤ちゃんのときの写真だって捨ててある。その後の母の話でまた父は私がわざわざ救出したものも全部捨てたらしい。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

「昔あなたにもらった思い出のものも、おばあちゃんのものも全部ないの」そう悲しそうに言う母が不憫でならず、今から思い出を作って欲しいという願いを込めて、毎年母の誕生日には身に着けられるハンカチや置いておけるぬいぐるみなど、形に残るものをプレゼントしている。家にあると父に捨てられるので、車に置いているという。

さらに不思議なことに、私がその後帰省すると、生き残り、元の4分の1程の量になってしまった写真のアルバムをわざわざ父は持ってきて、「これ懐かしいよな。持って帰ってもいいよ」と見せてくるのだ。いや、お前が大部分捨てたんだろ!と突っ込みたくもなるが、父はそんなこと覚えてもいないだろうし、話が通じないから触れないのが一番。マジで何なの、意味わからな過ぎて怖い。ホラーかよ。