「私たちの希望です」と

書籍刊行後に取材していただいた女性記者の方からは、「私たちの希望です」と言われました。「結婚しても、子どもがいても、こういう仕事ができるんだ。“諦めなくてもいいんだ”と思えた」と。そのように言ってもらえたのも嬉しかったですね。

今思えばすさまじい状況でした。ちょっとでも気を緩めたら崖から落ちてしまう、みたいな(撮影◎本社 奥西義和)

実はこの本の執筆中、子育てだけではなく、70代の両親の自宅の新築も同時に進行していて…。

両親が住み替えに迷っていた時、「家を建てたいなら力になるよ」と背中を押した手前、土地探しから打ち合わせまで一手に引き受けていたので、なおのこと大変でした。そこに取材、執筆、子どもの進学、引越しも重なって、今思えばすさまじい状況でした。ちょっとでも気を緩めたら崖から落ちてしまう、みたいな。(笑)

なので今、無事に本を出せて、両親の新しい家も完成して、子どもたちも毎日楽しく進学先に通えていることに、とてもホッとしています。


黒い海 船は突然、深海へ消えた』(著:伊澤理江/講談社)

なぜ、沈みようがない状況下で悲劇は起こったのか。調査報告書はなぜ、生存者の声を無視した形で公表されたのか。ふとしたことから、この忘れ去られた事件について知った、一人のジャーナリストが、ゆっくり時間をかけて調べていくうちに、「点」と「点」が、少しずつつながっていく。現れた事件の全体像とは。そして彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして…。第45回講談社本田靖春ノンフィクション賞、第54回大宅壮一ノンフィクション賞、第71回日本エッセイスト・クラブ賞、日隅一雄・情報流通促進賞2023大賞受賞作。