『星の王子さま』
私たちの魂は、この世に生を受けたとき、きっと何年間この地球で遊ぶかを決めてやってきたのだ。その終わりに向かって、「離陸の準備」を整え、去っていく。
『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)をお読みになったことがあるだろうか。砂漠に不時着した飛行機乗りが、小さな王子さまに出逢うものがたりだ。
飛行機の修理に四苦八苦する飛行機乗りの傍らで、王子さまが、自分の星の話と、他の星や、地球で出逢った者たちの話をしてくれるのである。
この地球で王子さまが見たもの、感じたことが、あまりにも温かく切なくて、飛行機乗りと、読者の胸を締め付ける。
やがて、飛行機の修理を終えたその日、王子さまが「今夜、自分の星に帰る」と告げるのだった。永遠の別れと悟って、悲しむ飛行機乗りに、彼はこう諭すのである。
「おまえはさ、誰も他のやつらがもっていないかたちで星をもつことができるよ……」
「お前が夜に星を見上げるとね、その星のひとつにおれが住んでいるせいで、その星のひとつでおれが笑っているせいで、おまえにとってはまるですべての星が笑っているように思えるはずだよ。笑う星たちを手に入れるわけさ!」
「そうして悲しみがやわらいだとき(なぐさめは必ずやってくるものだからね)、おまえはおれと知り合ってよかったと思うはずだよ。おまえはいつまでもおれのともだちなんだもん」(管啓次郎訳、角川文庫『星の王子さま』より)