バレエを通じて希望を持っていただきたい
2020年には、スクールバスを待っていて殺傷された児童が通っていた神奈川県川崎市のカリタス学園で公演を行いました。
事件で傷ついた心を癒やすとともに、命の尊さや人を愛する喜びを舞台から伝えたかったのです。このほか、子供たちが長期入院している病院でも公演を行っています。
昔、松山バレエ団に入団したての頃、広島の体育館で公演を行い、両親がびっくりしたことがありました。どんな場所でも、バレエをお届けするのは松山バレエ団の伝統でもあります。
MET(メト)の舞台も、体育館の舞台も、一瞬一瞬にすべてをかけるという意味ではすべて同じ。バレエを通じて生きる喜びや勇気や希望を持っていただきたい。
これからもどこにでも出かけて、心を込めて踊りたいと思います。
※本稿は、『平和と美の使者として 森下洋子自伝』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『平和と美の使者として 森下洋子自伝』(著:森下洋子/中央公論新社)
舞踊生活70年を超えてなお輝き続けているバレリーナ・森下洋子。広島に生まれたこと、そしてバレエとの出合いは必然だった。読売新聞連載「時代の証言者」に加筆のうえ単行本化。