(イラスト=川原瑞丸)
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「医者と患者」について。当連載でも紹介したインプラント治療に進展があったというスーさん。拍子抜けするほど楽だった手術を経て、26年前に亡くなったお母さんのことを思い出し――。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

インプラント治療に進展が

私的一大サーガとなりつつある我がインプラント治療に進展があったので、今月はおよそ10ヵ月ぶりの続編をお届けしたい。初見の方のために、まずは概要を。

数年にわたり完璧な虫歯治療を施してくれた歯科医院のインプラントが、打って変わって散々だったのが2021年のこと。30万円近く支払ったにもかかわらず、上顎にビスを斜めに埋め込まれ、ごまかされた挙句、しばらくしたらビスがスポッと抜けてしまった悲しいお話である。闘いを存分に味わうためのプロレス観戦に血道を上げておきながら、私生活ではすべての争いを避けて過ごしたい私は、文句も言わずすごすごと歯科医院から退散した。情けない。

幸運なことに、新たに通い始めた歯科医院が親切&丁寧だった。不憫な私の口腔事情に同情した院長は、自分が責任を持って最後まで施術を行うが、まずは骨が再生されるのを待つしかないと言った。