今注目の書籍を評者が紹介。今回取り上げるのは『特攻服少女と1825日』(比嘉健二 著/小学館)。評者は書評家の東えりかさんです。

それは硬派でやんちゃな不良少女たち

かつて「レディース」と呼ばれる女性だけの暴走族が存在した、と言ってもイマドキの若い人は全く想像がつかないだろう。いまや男性の暴走族だって珍しい存在になってしまったのだから。

だが1980年代後半から90年代前半にかけて、改造したバイクや四輪を乗り回し、各地の近隣住民に眉を顰められた不良少女だけの一群が存在したのだ。

さらに彼女たちを主役に据えた雑誌さえ人気を博していた。誌名を『ティーンズロード』という。発行部数は最大で約18万部。諸種雑誌部数動向(2023年1~3月)によると、文春砲で話題になる『週刊文春』が現在50万部を割り込むほどなので、なんとその3分の1ほどが売れていたことになる。

本書は1989年に『ティーンズロード』を創刊し約4年間編集長を務めた著者の回想録であると同時に、バブル時代に存在した硬派の不良少女の貴重な考現学でもある。第29回小学館ノンフィクション大賞の受賞作だ。

この雑誌で取り上げられている少女たちの年齢は10代前半から20代そこそこ。髪を染め、たばこやシンナーは当たり前。「族」入りし、徒党を組んで暴走行為をしていたが、そこには厳格な規則が存在し、総長以下規律を守ることが絶対で、彼女たちの制服はなんと特攻服。日本人は男女を問わず軍隊のような組織が大好きなようだ。

この雑誌は、当時、行き場のない不良少女たちの逃げ場となり、ここに載ることが目標にもなった。閉じられた世界であっても、確実にアイドルスターがいたのだ。

著者は編集者として付き合った埼玉・東松山「紫優嬢(しゆうじょう)」すえこ、香川・高松「胡蝶蘭」ひろみ、東京・八王子「綺麗」じゅんこという読者憧れの総長たちの人生を主に俯瞰していく。

やんちゃをしていた彼女たちが30年後の今、どんなに立派になったのか。それを知るだけでも本書を読む価値がある。