余命宣告

「あの、話はここからなんですよ」

不意に郁代さんが言った。

「ふた月ほど前のことなんですけど、実は私、余命宣告されまして」

えっ……。

思わぬ言葉に目を見開いてしまった。

「7年前に大腸がんが見つかったんですけど、その時は初期で、手術をして、ずっと経過は良好でした。だから安心していたんですけど、再発が判明したんです。もう肺にも肝臓にも転移しているとのことでした」

言葉を失ってしまう。

「そりゃあショックでした。孫たちの成人式くらいは見届けたいと思っていましたから。でももう手の施しようがないことがわかって、覚悟を決めました。もって1年半とのことです」

そうですか……。

「ただ、私以上に夫がショックだったようです。まさか私が先に逝くなんて考えてもいなかったんでしょうね、私以上に落ち込んでしまって」

何と言っていいものか……。