不倫の噂の真相
彼女が学生時代にご主人を好きだったのなら、恋の恨みもあったのかもしれない。
「晴恵は私を自分の下に置くことで溜飲を下げるつもりだったんでしょうけど、実際に入社したら、私の仕事は順調で、社長も私を褒めるようになって、それが癪で、今度は辞めさせようと画策したわけです。それも恥をかかせて、追い出そうと」
つまり、不倫の噂は。
「ええ、晴恵が仕組んだことでした」
これまた驚いてしまう。
非常に陰湿な手口である。
が、女にはそういうところがあることも否定できない。執念深いというか逆恨みというか、憎む相手がいることで自分を奮い立たせようする。そんな女を、私も何度も小説に登場させて来た。
「それを知った夫は、そこまでやる晴恵に空恐ろしさを感じたようです。結局、それで尚更別れられなくなったと言っていました。別れたら、何をされるかわからない気がして、不安になったと」
それはそれで腹立たしい言い訳である。
※本稿は、『男と女:恋愛の落とし前』(新潮社)の一部を再編集したものです。
『男と女:恋愛の落とし前』(著:唯川恵/新潮社)
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