振り返れば、悩み、苦しみながらも思い切って1つ扉を開けると、新たな道が開ける──その連続でここまで来た気がします。
そして今年7月、さらに新たな扉が開きました。パートナーの男性と、東京都港区の「みなとマリアージュ制度」でパートナーシップに登録しました。相手はコロンビアの方で、フアンといいます。
日本の民法では、今のところ同性同士の結婚は認められていません。ただこの制度では、たとえば一方が入院した際、家族として付き添いが可能など、結婚に近い生活が保障されます。
フアンと出会ったのは昨年5月。バルセロナを旅行中でした。翌日、一緒にサグラダ・ファミリアを見学に行ったとき、美大出身の私が意匠などについて説明しようとしたら、先に彼が説明してくれ……同じ時に同じことを考えていたのでびっくり! 4日間一緒にいて、それぞれ帰国。遠距離恋愛が始まりました。
昨年の7月にコロンビアに行き、正式におつきあいすることに。彼はコロンビアの出版社に勤めていましたが、ヨーロッパで仕事をしたい思いもあり、9月から3ヵ月間、ロンドンで一緒に滞在しました。しかし労働ビザがおりず、ロンドンでの生活は叶わなかったのです。
母もフアンをとても気に入ってくれ、来日した時は母が所属するハイキングクラブの人たちが、一緒に琵琶湖や高野山に連れて行ってくれました。仲良くしてくれるみなさんに、彼は「日本人の優しさに感激した」と言っています。
とはいえ、国際同性パートナーが日本に住むためには法的な後ろ盾が必要です。しかし日本では、まだまだLGBTQの権利が尊重されているとは言えません。外国人が仕事を見つけるのもハードルが高い。
多くの人が多様性への理解を深め、差別や偏見をなくしていくこと。それは、当事者だけでなく、すべての人が尊重され、幸せになることにつながるはずです。愛する人と安心して過ごせる日本はもうすぐだ、と期待しています。