10月の空はほんとうに美しい

話を戻すと、ベビーシッターという、他人をやすやすと家の中に入れて大切な仕事を任すというシステムは、使用人のいた文化の名残なのかなと考えたくなる。

そして最後に大切なこと。

ベビーシッターの労働対価は最低賃金だ。でないと親にも払いきれない。アメリカには公的補助なんかまったくない。ベビーシッターとして働くのは学歴や職歴や資格のない人たち。若くて、貧しくて、もしかしたら学生で、なんなら移民で。

そもそもカリフォルニア州には、何歳までは子どもはひとりにしちゃいけないという法律はないそうだ。州によっては(埼玉県議たちの言うとおり)ある州もある。まー、法律はなくても、虐待に対する意識はおそろしく厳しい。あたしは一度、ほんの数分間、赤ん坊のトメを車に放置して、目撃者から警察を呼ばれたことがある。


人気連載エッセイの書籍化『ショローの女』発売中!

米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。