サラ子は、高校生のとき、バイトとしてのベビーシッターを経験した。
最初の数年間は不適応すぎてにっちもさっちもいかなくなっていたサラ子だったが、トメの幼稚園の園長先生が「この子は子ども時代がすっぽり抜けてるのかもしれない、しばらく妹といっしょにここに通ってみたら」と提案してくれ、当人もその気になって妹といっしょに通い始めたところ、みるみるほどけて自信を持って明るくなって、子どもたちの人気者になったのだが、そこを買われて頼まれたベビーシッターだった。
夫は「親が送り迎えして、子どもははした金もらって、何のために」と文句を言っていたが、あたしにとってはサラ子本人が「引き受ける、人の家に行く」と決めただけでも御の字だった。そしてサラ子にとっては、さらに自信をつけるためのワンステップになったのだった。
時は流れ。こんどはカノコが親になり。ベビーシッターをときどき頼んでいたようだが、あたしがカノコの家に行ったときには、いつも子連れの家族総出で、ディナーや遊びに出かけたものだ。
こないだトメの家に3か月のしーちゃんを見に行ったときには、トメと夫が、高校生のベビーシッターにしーちゃんを預けて、あたしをディナーに連れていってくれた。
3か月児を高校生に預けるのかと仰天したが、親しい人の娘だったし、初回だからといって親がついてきてたし、娘といえども他人のやること、何も言ってません。
同じ家族の中でも、アメリカ人度があがるにつれ、ベビーシッターに抵抗がなくなり、使用度もあがってくるという塩梅だ。