「え、本当に?!」
 みちかも由希美(ゆきみ)ちゃんもおんなじ感じで手を口に持っていって嬉しそうにして眼なんか真ん丸にして。
 どうして女の子って皆おんなじポーズで喜んだり驚いたりするんだろうね。そしてどうして付き合っていたからって喜んでいるんだろうね。
「そう言ってたから、本当なんだろうな。まさかそんな嘘なんかつかないだろ」
 そういう雰囲気もあったよ。玄関から二人で入ってきたときには、あ、彼女なのかって思ったからね。
「わかるじゃん、あれだよ。えーと、そういう関係になってる二人ってさ。単なる仲良しとかとは違うものを醸(かも)し出すじゃん」
「醸し出すって」
 悟が笑う。
「カモじゃないよ」
「わかってるよ。わかるよ。あれ、あ、女の子の前ではダメだね」
「えーなに言ってよ。エッチな話?」
「いいか。そう、エッチな話だけど。車でガソリンスタンドに入ってきたカップルって夫婦とか恋人同士とかいろいろいるけれど。その、事前に致してきた二人ってすぐにわかるんだよね」
「致してきた」
 笑った。
 まぁ女子の前では気ぃ遣うよな言葉に。その辺のラブホテルとかでヤって帰ってきた二人ってことな。
「え、わかるものなの?」
「僕は、そんなふうに考えたことも、たぶんあんまりないし、そんな二人に遭遇したことも、ないか、な?」
 三四郎はないか。
「雰囲気だよな。本当に」
「そうだね」
「まぁとにかく三四郎の担任の塚原先生と尾道さんは、高校時代は恋人同士だったってことさ。今日の新情報」
「また付き合い出すとかじゃなくて?」
 そこまではわからんよ。
「そういうの、何て言うんだっけ」
「焼けぼっくいに火が点(つ)く」
 そう、それ。三四郎はマジ勉強できるよな。