多くの人が子どもの頃に読んだり、読み聞かされたりした「童話(寓話)」。実はその中に「人間とはどのように生きるべきか」といった指針や智恵がたくさん詰まっている、と話すのはジャーナリストの池上彰さんです。今回その池上さんと、元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんがあらためて童話を読み返し、人生に役立つヒントを探します。たとえば佐藤さんは、競争にさらされるビジネスパーソンや学生こそ「すっぱいぶどう」を読むべきと言っていて――。
「すっぱいぶどう」
◎あらすじ
昔あるところに、旅を続けている狐がいた。狐は食べ物も小川もないところを歩いていたので、何も食べていない日が続いていた。
そんな状態で歩き続けていると、目の前にぶどう畑が見えてきた。腹ぺこで、喉もからからだった狐は、大喜びでぶどう畑へ近づき、果実を取ろうとした。
ところが、ぶどうの木が高くて、狐の手が届かない。背伸びをしても、どんなに高く、何度ジャンプしてみても、それを取ることはできなかった。
おいしそうなぶどうを目の前に、疲れ果て、怒りと悔しさでいっぱいになった狐は、「どうせこのぶどうはすっぱくてまずいに違いない。絶対食べてやるもんか」と言って、その場を去っていった。[「すっぱいぶどう」イソップ]