現代人は狐に学べ

佐藤 今回取り上げたいのが、イソップ寓話の「すっぱいぶどう」です。ポイントは、言うまでもなく最後の狐の「捨て台詞」です。

池上 一般的には、努力しても欲しいぶどうを手に入れられなかった狐の負け惜しみと捉えられるのですが、それで終わっていては、教訓にはならないですね。あくまでも寓話ですから、狐もぶどうも「たとえ」です。

『グリム、イソップ、日本昔話-人生に効く寓話』(著:池上彰・佐藤優/中央公論新社)

考えてみれば、我々のやることなすこと、思い通りにいかないことばかり。ぶどうを取れなかった狐に対して「馬鹿だなあ」とか「惨めだなあ」とかの感想を抱くとしたら、それは丸ごとブーメランになって返ってくるかもしれません。

佐藤 この童話を再解釈することは、まさに現代人にとって重要な「生きるヒント」の提供に通じると思うのです。特に日々競争にさらされているビジネスパーソンとか、学生とかにとっては。ですから、少し詳しく論じておきたいと思うのです。

池上 いいでしょう。