(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
独身、フリーランス。世間から「大丈夫?」と思われがちな40代の小林久乃さんが綴る「雑」で「脱力」系のゆるーいコラム。読んでいるうちに、心も気持ちも楽に軽くなる……。ただ「手抜き」のテクニックを勧めるだけではなく、年齢を重ねたことで得た「脱力」による省エネによって、次へのエネルギーを担保していこう! というのが、本企画の主旨。第11回は「バレンタインは各々の下心で」です。

最近のバレンタインデー事情

コーヒースタンドで原稿を書いていたら、背後の30代と思しき二人の女性の会話が聞こえてきた。どうやら会社の同僚らしい。

「バレンタイン、今年も営業日だね」

「ウチらの部署の男性陣に渡す、チョコを買いに行けって先輩に言われるのかな。しかも自腹だよ、自腹。就業中に行くなって言われるし、別にお返しも欲しくない。だって欲しいもんじゃないもん」

「××課長とかさ、きっと家で『いや~、もらっちゃったよ~』とか言って、家族に自慢する材料が欲しいんだろうね」

「……ねえ、その日さ。一斉に休んじゃうってどう?」

「その前にチョコの料金を××さん(おそらく女性の先輩)から徴収されるよ。あの人、そういうところ抜かりないじゃん」

「あ~、くだらん!」

なるほど、そろそろ世間はそんな時期なのか。私も妄想の3人目の同僚として、つい会話に参加してしまった。そして会社員の強制的な慣習が、脈々と続いていることを知る、自由なフリーランス。彼女たちが徴収される、チョコレートの予算感は分からないけれど、どうでもいい相手に支払う金ほど悔しいことは知っている。

私も会社員経験があるとはあっても、ほとんど出版社の編集部員として働いていた。当時はコンプラ、労働基準法そっちのけで働くほど忙しく、バレンタインに意識を向けている暇は皆無。義理チョコを買いに出かける時間があるのなら、少しでも寝ていたかった。ただ、愛する人のためには寝る時間を削って、手作りスイーツを作る体力があったっけ。

残念ながら最近は、存在感が薄くなっているバレンタインデー。ティーンの間でさえも“愛の告白”アイテムとしては存在感が薄く、“友チョコ”の方がスタンダードだと、中学生の姪っ子から情報を得た。義理チョコも禁止令を出す会社あると聞く。では今後、肩身の狭くなった2月14日はどんな風物詩として、日本に存在していけば良いのだろうか。

これは私からの提案として読んでほしい。“バレンタインデーは、各々の下心を動かす”日で良いのではないかと。