貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在も「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第59回は「制約がある幸せ」です。
仕事が在宅になった
マニキュアを塗って2週間。色が剥げて、もはや爪の1/5くらいの面積になり、なんとも見苦しい。それでも、除光液で落とすのが面倒くさくて放置してしまう。以前なら考えられないことだ。
人目に触れることがなくなると、ここまでズボラになるのか。外に出るときも、上はパジャマのまま。ダウンを羽織れば見えないし。下はかろうじて、毛玉がない新しめのスウェットパンツに履き替える。そんな調子なので、お気に入りの服は箪笥のこやしになるばかりだ。最後に化粧したのはいつだったろうか。
昨年から完全フリーランスになり、仕事が在宅になった。それまでは、会社で働きながら副業としてライターをしていた。
兼業していた頃は、フルタイムで働いた後、家に帰ってからの時間、さらに休日を使って執筆の仕事をしていたので、休み時間がなく、常に時間に追われていたように思う。
完全フリーランスになればきっと時間の余裕も生まれて、執筆に専念できる。初めはそう思っていた。