わずらわしさが解消されたはずなのに

定年退職した後、スターバックスでバリスタとして働く男性のインタビューで、こんな言葉が出てくる。

「よく『毎日が日曜日』といいますが、日曜日は、平日があるから楽しくなるんですよね」(ITmedia ビジネスオンライン 営業マンからバリスタへ 68歳男性がスタバでフラペチーノを作る理由

この言葉にも、今なら心底共感する。そう、出勤日があるからこそ、完全オフになれる休みの日ができるし、休みのありがたみを感じるのだ。

写真提供◎AC

5人の子育てに奮闘する芸人の竹田こもちこんぶさんは、子育てを「絶え間ない不自由との戦い」と表現する。しかし、デフォルトが不自由だからこそ、たまに得られる自由の喜びが大きいとも語る。

「お母さんたちはいつも不自由を感じているから、少し自由ができると〈自由だー!〉って倍の喜びがあったりします。一人の時は感じなかった喜びです。不自由の裏返しで喜びもあるんですよ。」

mi-mollet「絶え間ない不自由との戦い、だからこそ喜びがある」子育てを通して見つけた本質【芸人・竹田こもちこんぶ】より

逆説的だが、制約や不自由さがあるからこそ、自由の喜びが生まれるし、感じられるのかもしれない、と思うのだ。

冷静に考えれば、在宅だからこその恩恵だって少なくないはずだ。体調不良の時、シフトを代わってくれる人を探す必要も、会社に連絡する必要もなく休めるし、大雨の日は無理して外に出る必要もない。化粧をしたり服を選ぶ手間もいらない。

出社していたころのわずらわしさが解消されたはずなのに、今は制約があったことが恋しく感じる。つくづく人は、ないものねだりの生き物なのだと思う。

前回「ヒオカ「今の日本では、恋愛、結婚、出産がワンセット。コースに乗れない人はマイノリティ、訳アリ扱いされる」」はこちら

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