「子どもはラクラクとことばを覚えられてうらやましい」「幼い時から外国語に触れていたら、今頃はバイリンガルになれたのに…」。いずれも「ことばの学習」についてよく耳にする一言です。一方「赤ちゃん研究員」の力を借りて、人がことばを学ぶプロセスを明らかにしてきた東京大学の針生悦子先生は「赤ちゃんだってことばを覚えるのに苦労している」と断言します。その無垢な笑顔の裏で、実は必死にことばを学んでいた…あなたは信じられるでしょうか? 書籍『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』をもとにした本連載で、赤ちゃんのけなげな努力に迫ってまいりましょう。
足踏みの理由
1歳頃から子どもは単語を話し始めます。
ただし、そこからすぐに、話すことのできる単語の数が爆発的な勢いで増えていくわけではありません。
この足踏みの理由ですが、一つは、この時期の子どもは指さしや視線の理解がまだ不安定で、相手が言った単語を結びつける先を探すのにまだまだ苦労しているから、ということがあるでしょう。
ただこの時期の子どもの単語の使い方を見ていると、足踏みの理由はほかにもありそうです。