(写真提供:Photo AC)
24年4月より放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。伊藤沙莉さん演じる主人公・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんです。先駆者であり続けた彼女が人生を賭けて成し遂げようとしたこととは?当連載にて東京理科大学・神野潔先生がその生涯を辿ります。先生いわく「嘉子は新しい法律、新しい制度を市民に啓蒙する役割を、積極的に担っていこうとしていた」そうで――。

司法省へ、そして最高裁判所へ

1947年3月、嘉子は司法省を訪れ、大臣官房人事課長の石田和外(後の最高裁判所長官)に対して、裁判官採用願を提出しました。

石田和外は、嘉子を坂野千里東京控訴院長と引き合わせてくれました。

しかし、坂野からは、女性裁判官が初めて任命されるのは、新しく最高裁判所が発足してからの方が良いと言われ、裁判官としての仕事を勉強するために、司法省へ入ることを勧められてしまいます。

日本の司法制度も大きな変革の中にあり、坂野にはそのことも念頭にあったのでしょう。

嘉子は残念ながら裁判官にはなれず、1947(昭和22)年6月、司法省民事部に嘱託として採用されました。

嘉子は、司法省民事部で民法調査室の所属となって、当時改正・制定の途上にあった民法・家事審判法の議論に関わっていきました。