「なんで結婚しないの?」という周囲の声
自分がCMやドラマに出ることになるなんて、未だに信じられない気持ちです。共演した深田恭子さんはとにかくとってもきれいで。ほかにも、渡部篤郎さんやら瀬戸康史さんやら……わあー、テレビで見てた人ばっかりやぁ。カチンコチンになってたら、深田さんがギューッとハグしてくださって。緊張が解けました。
女優を「仕事です」と言えるようになったのは最近のことです。短大を卒業して、ごく普通に会社勤めしてましたから。でも30歳を過ぎた頃から、「自分に向いている仕事は何だろう」と考えるようになりました。同世代は、結婚して家庭に入ったり、仕事に邁進していたり。でも私は結婚の予定もなかったし、証券会社での仕事はやりがいはあったけれど、勤め上げたいという気持ちもなかった。
なのに、周囲はいろいろなことを言ってくるんですよね。「なんで結婚しないの?」「結婚もしないで、これからどうするの?」って。今なら「じゃあ、どうしたらいいの?」と言い返せるけど、当時はそのたびに、「本当にどうしたらいいんやろ……」と真に受けていました。
自分が結婚するイメージは持てないし、せめて何か身につけたい、手に職をつけたい。もっと自分に向いている仕事があるんじゃないか、という思いがありました。それで会社を辞めて、派遣会社に登録することに。主任という肩書きもあり、「もったいない」と言ってくれる人もいました。
でも、もったいないって何やろ、と思って。肩書きが通用するのは社内だけです。一歩外に出れば、私はただの「人」。それより、自分に合う仕事は何か探したかった。40歳で裁判所に準職員として採用されるまで、派遣先の会社では事務、受付、販売促進……、いろいろな職種を経験することができました。
一方で、ちょっと響くものがあったら、すぐに「習う」と勢い込んでもいました。その道の講師になりたいと思ったんです。感覚的に「いいな、やってみたいな」と思うものがあれば、向き不向きも考えず習いに行きました。
書道とかそろばんとかオルガンとかフラワーアレンジメントとか、もういろいろ(笑)。それで、どれもすぐ挫折する。同僚に誘われた社交ダンス教室では、お手本通りにやったつもりだったのに「はい、今のは悪い見本」と言われてイヤになり、やめたこともあります。