薬で治らない人は「治せない」医療現場の実情
薬一辺倒の日本では、薬で治る人だけが救われています。薬が効きやすい心の病としては、「統合失調症」があります。
統合失調症は、薬でうまくコントロールできている間は、派手な症状を出すことも少なくなります。知能が落ちる病気ではないので、仕事に復帰できる人もいます。
「双極性障害(いわゆる躁うつ病)」は薬が効きますし、「うつ病(単極性障害)」も7割ぐらいの人は薬でコントロールできます。
また、以前は神経症とひとくくりにされていた「不安障害」や「強迫性障害」「パニック障害」もわりと薬が効きますが、やはり通常は一定のカウンセリング治療が必要です。
一方、薬で治らない症状に対して、今の日本の精神医療は完全にお手上げです。
ストレスチェックで引っかかる各種の「不安障害」や「適応障害」「依存症」「トラウマ」「PTSD」「強迫性障害」「身体症状症」あるいは子どもの「発達障害」などには十分に対応できていません。
それでも、薬物療法しかできない医者はほかの対応ができないため、薬をだらだらと処方し続けます。薬では治らないと気づいていても、ほかの対応ができないために、薬を出し続けるしかありません。
医学部時代、薬の話ばかり聞いて医者になった人たちは、柔軟な発想ができなくなっているのです。薬で良くなる病気でも、前述したように投薬をやめると再発するケースが多いことから、結局ずっと薬を処方し続けます。
薬で表面的な症状が良くなったとしても、本質的なところは薬だけで良くならない場合がほとんどだからです。
不眠で悩んでいる人に睡眠導入剤を使うと、少なくとも睡眠に関しては「眠れる」ようになります。
しかし、不眠の引き金となっている根本的な問題、たとえば、職場での人間関係だったり、過重な仕事量だったりが解決しないと、いつまでも薬を飲み続けなければ眠れないし、薬の量も最初は1錠で眠れたのに、だんだん2錠、3錠と増えていく。
そうした人には、ちゃんとしたカウンセリングなり、認知療法なりの精神療法を行わなければいけないのに、今の日本には、精神療法に関してまともな教育を受けている医者は絶対的に少ないのが現状です。
精神科医は増えているのに、標準化された精神療法の教育システムがないため、薬で治らない精神疾患に対応できる医者が大幅に不足しているのです。