自分と家の寿命、どっちが長いかしら、などと考えつつトイレに行ったとき…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは大阪府の60代の方からのお便り。夫が出かけ、自宅に一人になった時、ある事件が起こったそうで――。

開かずの扉

よく晴れた土曜日の昼下がりのこと。近くをほっつき歩くのが日課の夫がその日も出かけ、家でひとりになった。

ふと部屋を見回すと、30年前に買った家も、不具合が生じているのに気づく。

自分と家の寿命、どっちが長いかしら、などと考えつつトイレに行ったとき、事件は起きた。

用を足し、手を洗い、外へ出ようとドアハンドルに手を掛けると……開かない。内開きなのだが、途中までしか動かないのだ。鍵穴が甘くなっていて、鍵がかからないことが問題だったドアなのに。

なにかの間違いじゃないかと、汗だくになりながら引っ張るが、びくともしない。

夫はあと5時間は戻らないだろう。

壁はそれほど厚くないので、大声で隣家に助けを求めれば声が届くとは思うが、それは最終手段にしたい。