胸に手を当てる女性
イメージ(写真提供◎Photo AC)
身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
病気やケガで通院した後の在宅医療の支援であれば、病院の「医療連携室」などの窓口へ。認知症で要介護認定されれば「地域包括支援センター」へ。……基本的には主治医からの紹介先や案内があれば、そちらに向かえばいいわけです。
ただ複数の窓口に混乱したり、そもそも主治医からの紹介先が遠かったり……複数の病状に悩むケースもあるでしょう。
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。その黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている読者の方への駆け込み寺:【おとなの相談室】の先生として答えてもらうのがこの連載です。
​専門の「在宅看護」を主軸に、切っては切り離せないメンタルケアを含めて、質問していきたいと思います。(構成◎野辺五月)

諦めきれない自分

2000年ごろ、在宅看護の幕開け期から訪問看護ステーションの起ち上げに携わり、勤務する会社が解散を余儀なくされた際には「自分がやるしか」と経営者へ転身した渡部さん。連載第1回では、ご自身のルーツと、実際にどんな相談が多いか、この連載で伝えていきたいことを聞きました。

――なぜ看護師を目指したのですか? どういう経緯で「訪問看護ステーション」を独立開業するに至ったか教えて下さい。

身内に医療従事者がおり、憧れていました。祖母が助産師、祖父は高齢者施設の長、叔母が看護師だったんです。ただ、商社マンの父は断固反対の立場でした。色々あってCA(当時はスチュワーデス)の養成学校へ入学が決まり、一次はそちらに向かうことも考えました。CAも看護師も、誰かの世話をする仕事としては同じだからです。

ただ進路が決まった後で、掲示板で短大の看護学部の二次募集を見つけました。しかもなんとその日が出願の締切でした。諦めきれない自分に気づき、「これは運命だ」とすぐ出願を決め、なんとか合格し、看護師になることができました。

初めての勤務は、千葉のがんセンターでした。その後、妹(医療事務)の勤め先の整形外科から「往診の補助にいける看護師がいないか」と声が掛かり、地域での医療に興味があったため、承諾しました。