最近は銀行の対応も慎重に…(写真:stock.adobe.com)

超高齢化社会を迎えた今、親の介護は身近なものとなっています。しかし、そんな中子どもが親の財産を代理で処分することが難しくなってきているというのです。いざというときに「親の預貯金がおろせない」「実家が売れない」そんな事態を未然に防ぐにはどうすればいいのでしょうか?テレビ・雑誌で活躍する資産凍結対策のプロ、杉谷範子さんが解説する『親が認知症になると「親の介護に親の財産が使えない」って本当ですか?』より一部を抜粋して紹介します。

「注意義務違反」での訴訟を避けたい銀行側の事情

判断能力の喪失によって財産が凍結されるのは、本人が認知症になったときだけとはかぎりません。

要はコミュニケーションが取れず、本人の意思が確認できないことが凍結される理由ですから、病気で倒れて意識のない状態になっても、当然、同じことになってしまいます。

たとえば、B子さん(45歳)の母親のケースがそうでした。夜中に脳卒中で倒れて救急搬送され、一命はとりとめたものの、意識は戻りません。

入院や治療にまとまったお金がかかりそうなので、B子さんは母親の通帳と印鑑を持って銀行に駆け込みました。

ところが、窓口で100万円を引き出そうとしたところ、行員が、「こちらの通帳のご名義のご本人様ですか?」と聞きます。

「いえ、これは母の通帳です」「それでは、ご本人様にいらしていただきたいのですが」「母は入院しているので、私が代わりに来たんです」

「お電話で、お母さまのご意思を確認することは?」「まだ意識がないので、話ができるような状態ではないんです」

ここまで説明すれば行員も納得して、預金を引き出してくれるだろうとB子さんは思いました。