内閣府が令和5年に公表した「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏在住者のうち地方移住に関心があると答えた人の割合は35.1%だったそう。そのようななか、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員、講師の伊藤将人さんは「『地方移住がブームです』という言説自体が、地方移住ブームを構築している側面があるのではないか」と指摘しています。そこで今回は、伊藤さんの著書『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』より一部を抜粋してお届けします。
実は50年変わらない、移住希望割合と「仕事」というネック
移住希望と、仕事関連の悩み
国や自治体が「移住希望者の増加」を推し進める一方で、実際には希望者全員が移住するわけではありません。各種調査では、移住する人の数が思うように伸びない最大の原因として「仕事」が指摘されています(注1)。
一般社団法人移住・交流推進機構が2018年(平成30年)に実施した調査(注2)では、仕事関連・人間関係関連・情報不足関連・コスト関連のうち、移住を妨げている要因として「仕事関連」を最も多くの人が挙げています(図表1)。
全回答者のうち48.4%、約2人に1人が仕事関連の理由で移住が妨げられていると回答しています。この調査は主に若者を対象にしたものですが、働く世代についてはおおむね同様の傾向があります。
ここまでは、地方移住を取り巻く課題として比較的知られている話です。しかし過去にさかのぼって、移住希望と、移住希望を妨げる仕事について調べてみると、意外な事情が浮かび上がってきます。
注1: 本稿は、KAYAKURA掲載記事「移住促進を阻む地方の「仕事不足」-過去40年のデータから考察-」を基に大幅に加筆修正したものです。
注2: 一般社団法人 移住・交流推進機構「「若者の移住」調査【結果レポート】」2017、https://www.iju-join.jp/material/files/group/1/JOIN_report_201710.pdf