厚生労働省が公表した「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2023年の死亡数は157万6016人で、前年より6966人増加しました。いつかはおとずれる<死>について、年間200人もの死に立ち会ってきた精神科医・和田秀樹先生は「みんな死ぬのだから、必要以上にこわがったり、不安になることもない」と話します。そこで今回は、和田先生が「ひとりになってからどう生きるか」を指南した新刊『死ぬのはこわくない ―それまでひとりを楽しむ本』から、一部を抜粋してお届けします。
みんな死ぬんだから
死ぬのはこわいことではありません。
みんな死ぬのだから、恐れたり怯(ひる)む必要もありません。
必要以上にこわがったり、不安になることもないのです。
年間200人の方を看取ってきて、死の実情をこの目で見てきた私だからそう言えます。
それでも、たとえ「死ぬのはこわくない」と口にしている人でも、本心では「死にたくない」と思っていたりします。年をとるほど、そのように思う人が多くなるようです。
自分は決して死なないと思っているので、死という避けられない現実を見たくないのかもしれません。
人は死ぬことにも死なれることにも恐怖と不安を抱くものです。
それでも、もしあなたが夫や妻、家族を亡くしてひとりぼっちになって、ずっと悲しみに時間を費やしているとしたらいますぐやめなさい。
そんなことよりも、その日まで、自分らしく自由に楽しく生きることに時間を使うべきなのです。
せっかくひとりになったのだから、その日までせいいっぱいひとりを楽しんでください。自分の時間を思い切り充実させて暮らしてみてください。
死がこわくて不安になる、夫や妻、家族といった大切な人の死をずっと悲しんでいる、そんな不安を抱いている時間はもったいない。
なぜなら、遅かれ早かれ、誰もが等しく経験することだからです。
当たり前に、皆さん年をとれば、自然に死んでいくのです。