100センチのウエストと大衆演劇の大物俳優
昔からスポーツをやっていて若々しい肉体を維持しているなら、まだ理解できる。驚くべきは崑ちゃんがトレーニングを始めた年齢だ。なんと、86歳になってからライザップのトレーニングを始めたのだ。いまの僕の年齢のときには何もしていなかったことになる。男性の平均寿命=約81歳を優に超えているし、普通の人ならもう諦めてしまう年齢だろう。
そもそも崑ちゃんは昔から虚弱体質だった。19歳で結核を患って右肺を部分切除し、医者からは「40歳まで生きられない」と言われた。58歳のときには初期の大腸がんの手術も受けた。高齢期に入ればそこに老いも加わる。86歳の崑ちゃんに何があったのか。
「何本もあるジーンズが入らなくなってね。腹が。あまりにブサイクやから、女房とデパートに買いに行って試着室に入ったんです。女房は売り場で待ってたんやけど、あまりに時間がかかるから“何してんの?”って試着室まで来るでしょ。ちょうど店員さんが僕のウエストを測っててね。“ご主人のウエストは100センチあります”と。
背は高くないし、足は短いから、ウエストに合わせるとみんな裾が長くてチンチクリンなんです。女房も驚いて“もう帰りましょう。どないすんの? そのお腹”って。もう長いこと僕の裸を見てませんでしたからね。今や寝室も別やし、触れ合うこともない。昔はあんなに愛し合ってたのに(笑)」
“ウエスト事件”の直後に新幹線に乗っていると、偶然にも梅沢富美男さんに遭遇する。大衆演劇が好きで、梅沢さんのことは昔から見ていた。当時、70歳を目前にしていた梅沢さんは昔と変わらずスマートだった。
「崑さん、どうも梅沢です」
「相変わらず格好がいいねぇ。どこかにトレーニング行ってるの?」
「そうなんです。崑さん、ライザップってご存知ですか」