(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
60代でヨボヨボが始まってしまう人もいれば、80代で元気な人もいますが、なにが違うのでしょうか。今も現役で活躍している、93歳の喜劇役者・大村崑さんと76歳の医師・鎌田實さん。元気ハツラツなシニアライフを送っているお二人が大切にしているのは「筋肉」なのだそう。そこで今回は、大村さんと鎌田さんの共著『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』から一部をお届け。雑誌の企画で再会したときの語らいについて鎌田さんが綴ります。

100センチのウエストと大衆演劇の大物俳優

昔からスポーツをやっていて若々しい肉体を維持しているなら、まだ理解できる。驚くべきは崑ちゃんがトレーニングを始めた年齢だ。なんと、86歳になってからライザップのトレーニングを始めたのだ。いまの僕の年齢のときには何もしていなかったことになる。男性の平均寿命=約81歳を優に超えているし、普通の人ならもう諦めてしまう年齢だろう。

そもそも崑ちゃんは昔から虚弱体質だった。19歳で結核を患って右肺を部分切除し、医者からは「40歳まで生きられない」と言われた。58歳のときには初期の大腸がんの手術も受けた。高齢期に入ればそこに老いも加わる。86歳の崑ちゃんに何があったのか。

「何本もあるジーンズが入らなくなってね。腹が。あまりにブサイクやから、女房とデパートに買いに行って試着室に入ったんです。女房は売り場で待ってたんやけど、あまりに時間がかかるから“何してんの?”って試着室まで来るでしょ。ちょうど店員さんが僕のウエストを測っててね。“ご主人のウエストは100センチあります”と。

背は高くないし、足は短いから、ウエストに合わせるとみんな裾が長くてチンチクリンなんです。女房も驚いて“もう帰りましょう。どないすんの? そのお腹”って。もう長いこと僕の裸を見てませんでしたからね。今や寝室も別やし、触れ合うこともない。昔はあんなに愛し合ってたのに(笑)」

“ウエスト事件”の直後に新幹線に乗っていると、偶然にも梅沢富美男さんに遭遇する。大衆演劇が好きで、梅沢さんのことは昔から見ていた。当時、70歳を目前にしていた梅沢さんは昔と変わらずスマートだった。

「崑さん、どうも梅沢です」

「相変わらず格好がいいねぇ。どこかにトレーニング行ってるの?」

「そうなんです。崑さん、ライザップってご存知ですか」