夫婦で急に介護が必要になることも(写真提供:stock.adobe.com)

これからは〈自分介護〉の時代へ。2040年には、単独世帯が900万世帯に達するという予測があります。特に、65歳以上の単独世帯数の増加が推測されています。日本の家族構造は大きく変容して、これまで頼りにしていた家族相互助け合いシステムが崩壊しています。高齢者を包括的に支援/実践している団体「リボーンプロジェクト」が、介護の事例と、専門家のアドバイスを編集した『じょうずに頼る介護 54のリアルと21のアドバイス』より一部を抜粋して紹介します。

夫婦二人が倒れたら

介護申請:腰痛で歩けない中、自分で介護申請

純子さん(65歳)は、1年ほど前に腰痛と膝の関節痛を発症。激痛に加えてしびれがあり、足に力が入らなくなった。

「当初は、痛みで椅子に座れず、ベッドで寝返りも打てませんでした。歩けないのでトイレにも這っていく始末。家事ができないどころか、整形外科への通院も一人では無理で、寝たきりに近い状態でした」

純子さんには社会人の子どもがいるが、いまは独立しており、東京都内で夫との二人暮らし。発症してからは、夫が家事一切を引き受け、通院にも付き添った。

ところが、ある日、夫が腹痛を訴え、救急搬送される。

「かかりつけ医を受診したら、緊急手術が必要かもしれないと、そのまま救急車で病院に運ばれてしまったんです。当時、私の病状は一進一退。自分のことさえままならないのに、病院から『すぐに来てください』と言われて、慌てました」

その日は都内に住む長女に連絡を取って一緒に病院に行ってもらい、手術の立ち会いは長男に頼んだ。が、子どもたちは働き盛り。残業や出張で忙しく、頻繁に仕事を休んでくれとは言えない。

入院着や歯ブラシなどは病院に依頼すればよいが、スマホの充電器や老眼鏡など家から届けなければならないものもあり、そのうえ、入院同意書を翌日の昼間に受付に提出しろとのこと。

リュックを背負い、旅行用バッグを斜めがけにして、杖をつきながら病院にたどりついたら、受付の人が慌てて院内用のショッピングカートを持ってきてくれた。

これから入院する患者だと勘違いされたようだ。